更新日:2023/05/19 15:39
経営
トップダウンとは?メリット・デメリットや向いている組織をわかりやすく簡単に解説
読了まで約3分
企業における意思決定方式の一つであるトップダウン。
迅速な意思決定が可能であり、組織の方針に対する弊害が起こりにくい一方で、上層部の能力に左右されやすく従業員の成長につながりにくい傾向があります。
そのため、企業の意思決定方式に採用するべきかどうか迷っている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、トップダウンの特徴やメリット・デメリット、トップダウンに適している組織や状況などについて解説します。
トップダウンについて模索している企業経営者や代表者の方はぜひ参考にしてください。
トップダウンと並び意思決定方式である「ボトムアップ」については、下記の記事を参考にしてください。
ボトムアップとは?採用するメリット・デメリットやトップダウンとの違いなどを解説
トップダウンとは
そもそもトップダウンとはどういった意味なのでしょうか。
ここでは、ボトムアップとの違いも含め、トップダウンの意味について解説します。
トップダウンの意味
トップダウンの日本語における意味は、「上意下達」であり、組織の上層部が意思決定を行い、従業員に指示を出す管理方式を指すものです。
現場の従業員は、トップ層が決定した意思や指示に基づいて行動します。
多くの日本の企業で古くから使われている管理方式で、上司(経営層)から部下へといった命令系統が明確であるため、わかりやすく意思統一を図りやすい方式だと言えるでしょう。
ボトムアップとの違い
ボトムアップの日本語における意味は「下意上達」であり、組織の上層部が現場の従業員の意見を取り上げ、それをもとに意思決定をする管理方式を指すものです。
組織の上層部が最終的な意思決定をする点については、ボトムアップもトップダウンも変わりません。
異なるのは、ボトムアップが意思決定に従業員の意見を取り上げることに対し、トップダウンは上層部だけで意見をまとめ、意思決定をする点です。
ボトムアップ方式は成熟したベテランが多いチームに向いた管理方式であり、トップダウン方式は新人や中途採用者が多いチームに向いた管理方式だと言えるでしょう。
トップダウンのメリット
トップダウンによる管理にはさまざまなメリットがあります。
そのなかでも主なものとして挙げられるのは、次の3点です。
- 意思決定のスピードが速い
- 組織の方針に対する弊害が起こりにくい
- 新規・中途採用者が環境に慣れやすい
それぞれ解説していきます。
意思決定のスピードが早い
トップダウンの最大のメリットは、意思決定のスピードが早い点です。
ボトムアップの場合、現場から寄せられるさまざまな意見をくみ取り、そこから内容を精査して上層部が意見をまとめます。
しかし、トップダウンの場合、上層部の人間だけで意見を出し合うため、船頭多くして船山に上るといったことが起こりにくく、迅速な意思決定が可能です。
多様な意見のなかから、最善策を見つけ出すことも時には必要かもしれません。
しかし、先行者利益を活かしたい場合や、市場環境の変化により短期的な対応が求められる場合にはトップダウンによる迅速な意思決定が重要だと言えるでしょう。
組織の方針に対する弊害が起こりにくい
トップダウンでは上層部が組織の方針を決定し、現場の従業員がその方針に沿って業務を遂行します。
その結果、個人の判断による方針のずれや混乱が生じにくく、一貫性のある業務が可能です。
また、上層部が方針を明確に示すことにより、従業員が自らの役割や目的を理解しやすくなります。
部署やチームとして向かうべき方向が見えるようになれば、組織全体の連帯感が生まれ、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
また、一つひとつの問題に関する責任範囲が明確になるため、従業員は指示された業務に集中できるようになるのもトップダウンのメリットです。
新規・中途採用者が環境に慣れやすい
近年、ボトムアップ方式の管理を行う企業も増えているものの、トップダウンが主流であることは間違いありません。
そのため、中途採用者が前に勤務していた企業もトップダウン方式を採用している可能性が高く、早期戦力化、早期離職防止につながりやすいメリットがあります。
また、新規採用者の場合も、入社直後は自分からやるべきことを見つけるのは難しく、ボトムアップでは成長するのにも時間がかかってしまうことも少なくありません。
まずはトップダウンで仕事に慣れ、成長していくにつれて自分でやるべきことを見つけられるようにすれば、企業の成長にもつながります。
トップダウンのデメリット
トップダウンのデメリットとして考えられるのは以下の点です。
- 上層部の能力に左右されやすい
- 現場の意見が反映されにくく従業員の不満が溜まりやすい
- 従業員の成長につながりにくい
それぞれ解説していきます。
上層部の能力に左右されやすい
トップダウン経営での意思決定は上層部の判断に委ねられます。
そのため、有能な上層部であれば成果につながりやすくなりますが、上層部が能力不足の場合、誤った経営判断から一気に衰退してしまうリスクも少なくありません。
また、上層部の思い込みや偏見が反映される場合もあり、組織の柔軟性や創造性を損ねてしまう可能性があります。
これを避けるには、多様な価値観や意見を持つ経営陣の形成が欠かせません。
経営者に対して意見を言える存在を上層部内に置くことで、経営者による一方的に偏った意思決定の防止につながります。
現場の意見が反映されにくく従業員からの不満が起こりやすい
トップダウンの組織では、上層部から従業員へと一方的に指示が与えられるため、現場の意見やニーズが反映されにくく、従業員からの不満が起こりやすくなります。
とくに成果が思うように上がらない場合、上層部と現場の従業員との間に対立構造が生まれてしまう可能性もあるでしょう。
ほかにも、現場の実情を把握できないまま上層部が決定を下すことにより、実行不能な方針が出てしまうケースが少なくありません。
その結果、従業員のモチベーションが低下し、生産性も下がってしまいます。
トップダウンを維持しつつ現場の意見を反映させるには、たとえば各部署、チームでトップの人間を意思決定の場に含めることを検討してみると良いでしょう。
従業員の成長につながりにくい
トップダウンの組織では従業員自らが意見やアイデアを出すことが少ないため、自己判断力や問題解決能力が育たず、従業員の成長につながりにくい傾向があります。
また、上層部の指示を待つだけの組織ができあがってしまい、イノベーションを起こしにくいでしょう。
従業員の成長を促しつつ、トップダウンを維持するには、従業員にある程度の裁量権を与えることが重要です。
1から10まですべて指示するのではなく、最低限の指示を与え、残りは従業員が自分で考えて動けるようにする必要があります。
トップダウンが適している状況・組織とは
企業の意思決定方式は、トップダウンとボトムアップのどちらかが優れているわけではなく、状況や組織の形態によって適した方式は異なります。
ここでは、トップダウンが適している状況や組織について見ていきましょう。
カリスマ性のある経営者がいる
前述したように、トップダウンで成果が上がるかどうかは、上層部の能力に頼る部分があります。
先見性やカリスマ性、高いリーダーシップを備えた経営者がいれば、成果が上がる可能性は高く、トップダウンでの意思決定方式が向いた企業だと言えるでしょう。
また、経営者と従業員との信頼関係が構築できているかも重要な要素の一つです。
従業員が経営者に不信感を持っていれば、トップダウンは上手くいきません。
そうした意味でもカリスマ性を持つ経営者がいる企業はトップダウンが向いています。
業績低下や不祥事などの危機に陥っている
業績低下や不祥事などにより危機に陥っている企業は早急な行動・解決が必要です。
トップダウンを実施すれば速やかな意思決定が実現し、事業拡大のチャンスを掴めたり、経営危機を回避したりできる可能性が高まるでしょう。
業績低下や不祥事が発生すると従業員の士気が下がり、通常時よりもパフォーマンスは落ちてしまうものです。
そうした時こそ、上層部がリーダーシップを発揮し、トップダウンで明確な指示を行うことで、従業員のモチベーション向上が期待できます。
従業員の教育が必要な組織である
起業直後であったり、スタートアップであったりなど、ベンチャー企業のような従業員の能力育成を必要とする組織にはトップダウンでの意思決定方式が向いています。
トップダウンで指示を与えることで、新規社員が早い段階で仕事を覚えられるようになり、判断ミスを防げるようになるため、企業としての成長も早まるでしょう。
トップダウン方式を取り入れるコツや注意点
トップダウン方式をスムーズに取り入れて成果を上げるためのコツや注意点を解説します。
組織の目的・方向性を明示する
経営者や上層部が考えていることを明確にし、組織の目的や方向性を明記します。
ゴールが明確になることで従業員は能動的に動けるようになり、トップダウンを成功に導く可能性が高まるでしょう。
上層部からの指示であっても、どこへ向かっているのか、目標設定をどこに置いているのかがわからなければ従業員は集中して業務に向かうことができません。
そのため、目的や戦略、ビジョンを明確にすると同時に、すべての従業員に伝わるよう、繰り返し伝えることが重要です。
ワンマン経営にならないように注意する
経営者のワンマン経営は従業員の仕事に対するモチベーションを低下させ、離職につながりやすくなります。
トップダウン方式は基本的に上層部だけで意見を出し合い、意思決定までを行うため、ワンマン経営に陥るリスクは高いと言えるでしょう。
とくに上層部がすべて経営者のイエスマンになっている企業は、ワンマン経営に陥るリスクが大きいです。
これを防ぐには、意思決定を行う際に毎回少しずつ上層部の人員を入れ替える、現場の人間を1〜2人入れるなど、多様な意見を持つ人員を含めることが必須と言えるでしょう。
トップダウンデモクラシーを状況次第で取り入れる
トップダウンデモクラシーとは、トップダウンとボトムアップの両者の長所を組み合わせた意思決定手法のことを指します。
トップダウンで上手くいかない場合は、ボトムアップ方式を上手く取り入れながら意思決定を行いましょう。
トップダウンデモクラシーが適した状況としては、新しいプロジェクトや商品の開発において、従業員からのアイデアや提案を取り入れることが求められるケースが挙げられます。
また、上層部と現場の従業員とのコミュニケーションが必要な時や、モチベーション向上、チームワークの促進をしたい場合にもトップダウンデモクラシーがおすすめです。
トップダウンを成功させるには組織力が重要
トップダウンとは、組織の上層部が意思決定を行い、従業員に指示を出す管理方式です。
新規社員の育成や迅速な意思決定が求められる際に高い効果が期待されます。
トップダウンを成功させるには、ワンマンにならないように注意すること、状況に応じて現場の声も活かすことなどが挙げられますが、もっとも重要なのは企業の組織力です。
上層部を含め全社員が信頼関係を強化させ、一致団結することで上層部からの指示にも能動的に動けるようになり、トップダウンの成果を高められるでしょう。
そのために欠かせないのが企業の経営戦略の明確化です。
企業がどのような目的を持ち、どこへ向かっているのかを明示することで、従業員は高いモチベーションを持って上層部の指示に対応できるようになります。
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