更新日:2023/06/22 14:58
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融資・投資・出資の違いとは?メリットやデメリット資金調達のポイントなど詳しく解説
読了まで約4分
経営者や代表者として企業の成長を目指し、資金調達を検討している際、どのような方法があるのか、融資・投資・出資の違いやそれぞれのメリットとデメリットの把握は欠かせません。
しっかりと理解していないと、後になってから返済に困る、的確なアドバイスを得られない、求める金額を得られないといった可能性が高まってしまうでしょう。
本記事では、融資・投資・出資の概要と違い、メリット・デメリットから、自社の現状に合わせた資金調達を実現させるためのポイントを解説します。
目次
融資・投資・出資の違い
適切な資金調達を実現するうえで必要となる融資・投資・出資の違いについて解説します。
【融資】銀行や金融機関からの貸付を受ける
融資とは、銀行や信用金庫などの金融機関や自治体、商工会議所などから受ける借入金です。
援助ではないため返済する義務があり、元本に利子を加えて返済しなければなりません。
融資の種類は日本政策金融公庫や商工会議所など国や自治体をとおして受ける公的融資と、銀行や信用金庫などから受ける民間融資の2つです。
融資を受けるには返済を確実に行えるかどうかが重視されるため、資金繰り表のほか、決算書や試算表などの帳簿の提出が求められるケースもあります。
ただし、融資先により重視する点が異なる場合もあるため、必ず事前に相談を行ったうえで、融資先の選択をする必要があります。
【投資】将来的な利益獲得を期待して資金を融通してもらう
投資とはベンチャーキャピタル(VC)や個人の投資家から受ける資金です。
融資とは異なり借入金ではないため、必ずしも返済の義務があるわけではありません。
投資は資金の提供を受けた側が株式を発行し、投資家に渡す株式投資が基本です。
投資家は資金を提供する代わりに株式を取得し、配当を受けたり、売却したりすることで利益を得ます。
ただし、現在では株式との交換ではなく純粋に資金を提供する行為を投資と呼ぶのが一般的です。
資金を提供して利子を得る「融資」や、次に紹介する配当を得る「出資」もリターンを得ることを目的としているという点では投資の一種といえます。
【出資】事業の成長を示し資金を援助してもらう
出資は投資と同様、VCや個人投資家から受ける資金です。
前述したように、現在の投資は株式との引き換えではなく純粋に資金を提供するもので、株式との引換に資金の援助を行うことは出資と呼びます。
出資を受ける側に返済の義務はありませんが、株式が発行されるため、その量によっては会社経営に影響力を持つケースも少なくありません。
返済義務がなく、事業の成長を期待して資金を提供する点において、投資と出資の概念は近いといえるでしょう。
出資を受けるには、事業の成長性を示す必要があるため、事業計画書や経営計画書など今後のビジョンを明確にする書類の提出が必要です。
融資によるメリット
融資を受けることにより、得られるメリットとして挙げられるのは次のとおりです。
- 必要な金額の資金調達が見込める
- 経営の自由性を維持しつつ資金を調達できる
必要な金額の資金調達が見込める
融資によるメリットは、自社が必要としている資金の調達が見込める点です。
もちろん、自社の信用状況にもよりますが、金融機関が出す条件さえクリアできれば、多額、少額にかかわらず資金を調達できます。
経営の自由性を維持しつつ資金を調達できる
融資を行う金融機関が求めるのは期限までに元本と利息を返済してもらうことであり、企業の経営に係ることではありません。
そのため、企業側は返済さえしっかりと行っていれば、経営の自由性を維持したまま、資金の調達が可能です。
融資によるデメリット
融資を受けることによって生じる主なデメリットは次の2つです。
- 利息の支払いや元本の返済義務がある
- 保証人や担保が必要なケースが多い
利息の支払いや元本の返済義務がある
投資や出資は基本的に返済の義務がありません。
しかし、融資は調達した資金を必ず返済する必要があります。
さらに返済時には利息をつけなくてはならず、調達した資金よりも返済額は多額です。
当初の予定どおり調達した資金で上手く経営が回っていれば問題はありませんが、見込んでいた利益を得られないと資金繰りが苦しくなってしまう可能性があります。
保証人や担保が必要なケースが多い
保証人や担保が必要なケースが多いのも融資のデメリットです。
融資を受ける際には審査を受ける必要があり、返済能力があると判断されない場合、保証人や担保を求められるケースがあります。
特にスタートアップ企業で担保とする資産がない場合、経営者の個人資産を担保にするケースも少なくありません。
万が一、経営不振に陥ってしまえば、会社だけでなく個人預金や財産まで失ってしまうリスクがあります。
投資によるメリット
融資をしてもらうことにより得られるメリットとして挙げられるのは次のとおりです。
- 資金の返済や利息の支払いが必要ない
- 無担保での資金調達が可能である
資金の返済や利息の支払いが必要ない
投資は投資家から資金を援助してもらう形のため、資金を返済したり、利息を支払ったりといった必要はありません。
そのため、万が一、事業が上手くいかなかった場合でも返済によって資金繰りがさらに悪化してしまうリスクは防げるでしょう。
また投資家にとっては株式投資の場合に限り、配当や株価上昇による売却益を得られるメリットがあります。
無担保での資金調達が可能
投資を受ける際に重視されるのは、返済能力ではなく企業の成長性や将来性です。
返済の必要がないため、企業の信用度は重視されず、担保や保証人を求められることもありません。
特に担保にする資産がなく、個人資産を担保にせざるを得ない経営者や代表者にとって無担保で資金調達が可能なのは大きなメリットといえるでしょう。
投資によるデメリット
投資をしてもらうことによって生じる主なデメリットは次のとおりです。
- 自由な経営を行いにくい
- 必要な額の資金調達ができない可能性がある
自由な経営を行いにくい
投資で得た資金は返済の必要はないものの、もし調達した資金を使っても経営が上手く行かない場合、投資家が経営に係わってくるケースが少なくありません。
また株式投資の場合、自社の過半数の株式を保有されてしまえば、自由な経営を行いにくくなるだけでなく、経営陣の機能が失われてしまうリスクもあります。
必要な額の資金調達ができない可能性がある
投資は必要な額の資金調達ができない可能性もありえます。
融資の場合、返済能力があると判断されれば、額の多少に関わらず必要な資金の調達が可能です。
しかし投資の場合、額の判断をするのは投資家であり、投資を受ける側で額のコントロールはできません。
出資によるメリット
出資をしてもらうことにより、得られるメリットとして挙げられるのは次のとおりです。
- 資金や利息の返済義務がない
- 出資者から企業成長のためのアドバイスが受けられる
資金や利息の返済義務がない
出資は基本的に株式購入により行われます。
そのため、投資と同様に調達した資金の返済義務はもちろん、利息の支払いもありません。
万が一、会社が倒産に追い込まれるようなことがあった場合でも、経営者や代表者が個人的に負債を抱えてしまうリスクがないのは大きなメリットです。
資本金を増やしたい場合は、新株を発行して出資を受けられるため、増資を行いやすいのも出資のメリットといえるでしょう。
出資者から企業成長のためのアドバイスが受けられる
出資者のなかには、これまでにも多くの企業に出資をした経験が豊富な人が少なくありません。
そのため、出資者からは資金を調達するだけではなく、企業成長のためのアドバイスを受けられる可能性があります。
出資した企業が成長すれば株の配当や売却益によって出資者の利益につなげられるため、出資者からの有益なアドバイスやサポートも期待できるでしょう。
出資によるデメリット
出資をしてもらうことによって生じる主なデメリットは次のとおりです。
- 経営権を奪われる可能性がある
- 業績が上がるとコストが増えることがある
経営権を奪われる可能性がある
株式購入によって行われる出資は、その額によっては大量の株式を出資者に渡すことになり、経営にも大きく関与してくる可能性があります。
通常、議決権株式の過半数以上を出資者が保有してしまえば、経営権を奪われてしまうリスクがあるでしょう。
また、企業の株価が低いと必要な資金を調達できない場合があるのも出資のデメリットです。
業績が上がるとコストが増えることがある
資金調達により業績が上がるのは企業にとって喜ばしいことですが、その分配当金の支払いや株主優待のコストも上昇してしまいます。
調達した資金に比べれば大きなコストにならない場合もありますが、業績が向上するにつれ、配当金のコストも上昇してしまうのはデメリットと言えるでしょう。
融資・投資・出資を受ける際のポイント
融資・投資・出資を受ける際にはいくつか注意すべきポイントがあります。
それぞれについて解説します。
【融資】企業に対する信用を示す
融資を受ける際は確実に資金を返済できる点を示すことが重要です。
そのためには、売上目標や信頼性の高い取引先の存在をアピールすることで、自社の安定性を伝えやすくなります。
売上高や収益性に懸念がある場合は、融資の相談をする前に無駄な経費の見直しや業務改善を行い、売上高や収益性を向上する対策の実施が欠かせません。
できることはすべて行ったうえで融資の相談に臨みましょう。
【投資】成長が期待できる根拠や姿勢を示す
投資を受ける際にもっとも重要なのは自社の将来性です。
そのためには競合との差別化を図り、独自性を強みとしたアピールが欠かせません。
返済が求められる融資で重視されるのは事業の安定性や堅実性です。
しかし、投資の場合は独自性や新規性が重視されるため、根拠を示しつつも大きな目標を掲げることを意識しましょう。
【出資】投資家との交流を深める
出資を受けるには出資を行う投資家と出会う機会を多く持つことが重要です。
まずは出会いの機会をつくり、そこで交流を深めつつ、自社の成長に協力したいと思ってもらえるようにしなくてはなりません。
投資家に出会うには、ベンチャー企業や起業家が自社の製品やサービスを投資家に売り込むためのプレゼンテーションを行う、ピッチイベントに参加するのがおすすめです。
また、投資家ネットワークに参加したり、投資家とのマッチングサイトに登録したりする方法もあります。
融資や投資を受ける際は事業計画書を活用しよう
多くの企業にとって、資金調達は既存事業の成長や新規事業の創出のほか、土台を固めるためにも欠かせないものの一つです。
ただし、融資・投資・出資など返済の必要のないものや、条件が厳しいものなどさまざまなため、自社の現状把握とそれぞれのメリット・デメリットの把握は欠かせません。
必要な資金を調達するには、投資家や金融機関に対し、信用度を高め、成長を実現させる根拠を示すことが求められます。
そこで重要となるのが事業計画書の作成です。
事業計画書によって自社のビジョンや方向性を明確にすることで、投資家や金融機関に対し資金調達の根拠を示せます。
また適切に作成された事業計画書があれば、返済への道筋も明示できるため、信用度向上にもつながるでしょう。
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