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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/06/15 15:20

経営

資金繰り

売上高利益率の出し方は?粗利率との違いや低い場合の対処法などわかりやすく解説

読了まで約5分

企業の経営状況を分析する上で「売上高利益率」は欠かせない指標です。
売上高利益率は、単に収益の高さを示す数値ではありません。
特性を把握し、適切に活用することで事業活動の改善点やコストを抑えるべきポイントを知ることができます。

本記事では、売上高利益率の算出方法や計算例、利益率を改善するための対策などを詳しく解説します。

売上高利益率とは

売上高利益率とは、企業が売上高から得た利益の割合を表す指標です。
一般的には、企業が稼いだ利益を、その企業が得た売上高で割った値を百分率で表したものです。

売上高利益率は、企業の利益性を測る指標として広く使われています。
高い売上高利益率は、企業の効率的な経営や収益性の高さを示すことがあります。

一方、低い売上高利益率は、企業の収益性が低いことを示し、経営上の課題となることがあります。

売上高利益率は、企業の業種や規模によって異なるため、業種や企業間での比較は難しい場合がありますが、同じ企業の複数の期間の売上高利益率を比較することで、企業の利益性の変化を把握することができます。

また、業種別の平均値などを参考にして、同業他社と比較することも可能です。

売上高利益率の計算方法

 

売上高利益率=利益÷売上高×100(%)

ここで用いる「利益」とは、商品やサービスを売り上げた金額から仕入れなどにかかった経費を差し引いた金額です。


例として、1,500円で仕入れて2,000円で販売する商品Aと16,000円で仕入れて18,000円で販売する商品Bの利益率を比較してみましょう。

 

商品Aの利益率=(2,000-1,500)÷2,000×100=25%

 

商品Bの利益率=(18,000-16,000)÷18,000×100=16.6%
 

売上高が大きい商品Bのほうが、一見すると収益性が高いように見えたかもしれません。

 

しかし、商品Aの利益率が高く、効率的に儲けを出せる商品であることがわかります。

 

このように、売上高利益率を算出すると、企業の収益性や競争力、営業力を推し量ることができるのです。
また、損益計算書に表記されている利益には「総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前利益」「当期純利益」の5種類があります。

これらの利益を用いた5種類の売上高利益率が存在し、分析できる内容も異なるのです。

売上高利益率と粗利率の違い

損益計算書には「粗利率」という言葉も登場します。
粗利または粗利益とは、売上高から売上原価を差し引いた利益で「売上総利益」と同義の言葉です。

粗利率は、売上高のうち粗利の占める割合を算出した数値になります。

粗利率=粗利÷売上高×100(%)

粗利率は、商品そのものの価値や収益性がわかる指標です。
特に、薄利多売戦略をとることが難しく、販売の効率性を高める必要がある中小企業に重視されます。

粗利率と値入率の違い

値入とは、販売価格から導き出される予想の利益のことですが、言い換えると先に利益を予想して販売価格を設定する方法のことで、値入率とは「〇%の利益を乗せたい」という割合のことです。

粗利益は、実際の販売実績に基づいた利益のことです。
この2つは似ているようで実は大きく異なります。

原価÷(100%–希望の値入率)=販売価格

利益率30%を残そうと思うのであれば、原価ではなく、販売価格に対して30%残すという計算をしなければなりません。

 

【種類別】売上高利益率の算出法と計算例


先述でも触れた通り、企業の経営状況を表す損益計算書では5種類の利益率が用いられています。
それぞれの算出方法や計算例を解説します。

売上高総利益率

売上総利益とは、売上高から商品原価や製造原価などの売上原価を差し引いた利益を指します。
先述の通り、粗利益とも呼ばれる指標です。

売上総利益=売上高-売上原価

売上原価を計算するために必要なのが、期首商品棚卸高と期末商品棚卸高です。
期首在庫に仕入高を足して期末の在庫を引くことで、その期の売上原価を算出することができます。

売上原価=期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高

売上総利益率は、売上総利益を売上高で割って算出します。

売上高総利益率=売上高総利益÷売上高×100(%)

 


例として、当期の売上高3000万円の企業の利益率を算出して見ましょう。

 
 
当期の業績:売上高3000万円、商品仕入高1800万円、期首商品棚卸高300万円、期末商品棚卸高150万円

 
売上総利益=3000万円-(300万円+1800万円-150万円)=1050万円

 

売上高総利益率=1050万円÷3000万円×100=35%
 
売上高総利益率は、商品そのものの競争力や企業のブランド力を表すデータです。
 

 

業種や業態によって平均値が大きく異なりますので、単純な数値の大きさではなく、競合や同業他社と比較して自社を分析することが重要です。

また、景気の影響を受けて上下しやすい数値でもあります。
売上高総利益率を分析に用いるときは、景気の動向を考慮することも大切です。

売上高営業利益率

営業利益とは、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引いた金額のことです。
販売費および一般管理費とは、事業の運営に必要な経費を指します。
例えば、オフィスの賃料や地代、水道光熱費、人件費、自社製品の販売にかかった広告宣伝費、取引先との通信費などが該当します。

売上高営業利益率は、次の式で算出します。

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100(%)

 

先述と同じように、売上高3000万の企業を例に考えてみましょう。


当期の業績:売上高3000万円、売上総利益550万円、販売管理費および一般管理費430万円

 

営業利益=550万円-430万円=120万円

 


売上高営業利益率=120万円÷3000万円=4%

 


営業利益とは本業の営業活動によって得られた利益を表します。

 

 

つまり、売上高営業利益率を算出することで、営業活動や経営管理の効率性を知ることができるのです。

売上高営業利益率の平均的な数値は1〜5%程度であり、大企業ほど数値が高くなる傾向が見られます。
同業他社や競合と比べて自社の数値が低い場合は、固定費や営業費の見直しを図るべきでしょう。

営業利益率について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
営業利益率の目安は?算出方法や数値が悪いときの対処法

売上高経常利益率

売上高経常利益率とは、売上高に占める経常利益の割合を算出した数値です。
経常利益とは、営業利益に不動産による収益や借入金返済の利息といった営業外収益を加算した金額を指します。

売上高経常利益率の計算式は、以下となります。

売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100(%)

 


こちらも、先ほどの例を用いて計算してみましょう。

 
当期の業績:売上高3000万円、営業利益120万円、営業外利益50万円、営業外費用100万円

経常利益=120万円+(50万円-100万円)=70万円

 


売上高経常利益率=70万円÷3000万円×100=2.3%

 

売上高経常利益率によって、企業が本業のみでどの程度利益を生み出しているのか、つまり事業活動のみの収益性を分析できます。
例えば、売上高営業利益率が低いのに売上高経常利益率が高い場合は、株式や不動産などの財務活動で高い利益を上げているものの、商品やサービスの競争力が低い可能性があります。

売上高税引前利益率


売上高税引前利益率とは、売上高に占める税引前利益の割合を示す数値です。
税引前利益とは、経常利益から特別損失と特別利益を足し引きして算出します。
つまり、法人税等を控除する前の金額を示した値です。

売上高税引前利益率の計算式は、以下となります。

売上高税引前利益率=税引前利益÷売上高×100(%)

 


こちらも、先ほどの例を元に計算してみましょう。

 

当期の業績:売上高3000万円、経常利益70万円、特別利益30万円、特別損失15万円

税引前利益=70万円+(30万円-15万円)=85万円


売上高税引前利益率=85万円÷3000万円×100=2.8%

 

売上高税引前利益率を算出すると、その名の通り法人税等の税金を支払う前の利益がわかります。
災害による損失や不動産の売却損などによって突発的に特別損失が大きくなると、一時的に数値が低くなる点に注意が必要です。

売上高当期純利益率

売上高当期純利益とは、売上高に占める当期純利益の割合を示す値です。
当期純利益は、税引前利益から法人税等の税金を差し引いて算出します。つまり、当期の最終的な事業利益を示す数値です。

売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高×100(%)

 


こちらも、同様に計算例を考えてみましょう。


当期の業績:売上高3000万円、税引前利益85万円、法人税等15万円


当期純利益=85万円-15万円=70万円

 


売上高当期純利益率=70万円÷3000万円×100=2.3%

 

基本的に、企業はこの最終的な純利益を増やすために事業活動を行います。
ただし、不動産の売却などで一時的に増加する特別利益に左右されるため、経営の実態を掴みづらい数値でもあります。

 

売上高利益率の目安と日本企業の現状

企業分析や公的な調査においては、事業や商品の収益性を把握しやすい売上高営業利益率や売上高経常利益率を用いることが一般的です。

経済産業省が行っている企業活動基本調査では、主要産業の営業利益率と経常利益率の推移が例年調査されています。
主要産業の合計値は、営業利益率が4.3%、経常利益率が6.5%でした。
また、2022年の主要産業の数値は次の通りです。

  • 製造業 営業利益率:5.6%、経常利益率:9.0%
  • 卸売業 営業利益率:2.7%、経常利益率:4.6%
  • 小売業 営業利益率:3.0%、経常利益率:3.4%

※出典:2022年経済産業省企業活動基本調査(2021年度実績)|経済産業省

 

売上高利益率が低い場合の対処方法


同業他社と比べて売上高利益率が低い場合は、経営の見直しが必要と考えられます。
具体的にどのような対処方法をとるべきか解説します。

売上高を上げる

最も単純に利益率を向上させる方法として、売上高を高めることが挙げられます。
売上高を高める方法は、①販売価格を上げること、②販売量を増やすことの2つです。

ただし、安易に販売価格を上げる方法はリピーターを失うリスクが高いため、おすすめできません。
商品の値上げは、値上げしただけの付加価値を消費者に提供できるのかを考慮し、慎重に実行することが大切です。

現実的には、販売量を増やす施策を検討する方法があります。
その際、コスト面にも注意してください。
新しい販路を開拓したり、販売人員を増やしたりすれば販売量の増加が期待できますが、宣伝費や人件費といったコストも増大するかもしれません。
期待できる効果とコストのバランスを考慮して、施策を検討することが大切です。

商品の仕入れ原価を削減する

商品原価を抑えることも、利益率の向上につながります。
具体的には、仕入れ先を見直して仕入れ値を抑える、在庫管理を徹底して過剰在庫を防ぐ、古い空調設備を見直して光熱費を抑える、電気や水道や契約プランを見直すといった施策が考えられます。

原価には人件費も含まれますが、安易な給与カットやリストラは禁物です。
従業員のモチベーション低下や離職に直結しかねないため、最終手段と考えておきましょう。

人件費について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
人件費率の計算方法は?労働分配率との違いや適切な算出方法など詳しく解説

固定費などのコストを減らす

企業コストをできるだけ抑えることも重要です。
企業コストには、仕入れ費用など毎月金額が変動する「変動費」とオフィス費用や賃料のように支払い額が決まっている「固定費」があります。
固定費は売上の大きさに関わらず毎月支払う必要がある費用のため、できる限り小さく抑えることが理想です。

例えば、労働環境を改善して残業代を抑える、業務のペーパーレス化を進める、テレワークを進めてオフィスを縮小するなどの施策があります。

 

売上高利益率が低い場合はすぐに見直し・改善が必要


売上高利益率には5つの種類があり、それぞれ分析できる内容が異なります。

  • 売上高総利益率:商品そのものの競争力や企業のブランド力がわかる
  • 売上高営業利益率:営業活動や経営管理の効率性がわかる
  • 売上高経常利益率:事業活動のみの収益性がわかる
  • 売上高税引前利益率:法人税等の税金を支払う前の利益がわかる
  • 売上高当期純利益率:当期の最終的な事業利益がわかる

それぞれの特性を把握し、自社の経営状況を分析する指標として活用しましょう。

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