更新日:2023/02/24 12:45
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売掛金とは?基礎知識や仕訳方法を詳しく解説【売上/経理】
読了まで約3分
経営の安定と継続を考えるとき、大切にしたいことのひとつに「売掛金の管理」があげられます。
事業規模が大きくなるにつれて、売掛での取引も多くなります。
売掛金を正確に管理するには、入金サイクルや仕訳方法などをしっかり把握しておくことが大切です。
目次
売掛金とは?
商品やサービスの代金をその場で支払うのではなく、後で支払うことを「掛取引」といいます。
企業では、継続的に多数の取引先とさまざまな取引を行います。
そのたびに代金を清算するのは、あまり現実的な方法ではありません。
そのため、毎月15日締めや月末締めといったように、日を決めて1カ月単位で請求するのが一般的となっています。
このときに、売った側が受け取る予定の代金が「売掛金」です。
以下で、他の勘定科目との違いについて解説します。
売掛金と買掛金の違い
売掛金は代金を請求できる権利(債権)であるのに対し、買掛金は代金を支払わなければならない義務(債務)です。
掛取引は信用に基づいた商取引です。買掛金を支払うことができなければ信用を失い、今後の取引がなくなってしまうかもしれません。
信用を保ち、健全な経営を続けるには、売掛金はいつ回収できるのか、
買掛金をいつ支払うのかといったスケジュールを把握しておく必要があります。
黒字倒産に陥らないためにも、売掛金と買掛金のバランスを保ち、回収と支払いを確実に行うことが大切です。
売掛金と未収金の違い
未収金は売掛金と同じく、将来受け取るべき代金です。ただし、売掛金とは異なり、本来の事業活動以外から得る代金を指します。
例えば、会社所有の不動産や有価証券を売却した代金、不動産賃借業以外の会社が自社物件から得る賃貸収入などは、未収金にあたります。
未収金に計上できるのは決算期後1年以内に回収予定のものです。
本業の利益を誤って未収金に計上した場合など、未収金が多額になると不正会計を疑われ、
金融機関の評価が下がる恐れがあります。
売掛金と未収金はきちんと区別して管理することが大切です。
売掛金と立替金の違い
立替金は、他者が負担すべき費用を一時的に支払うなど、代金を立て替えた際の勘定科目です。
受け取る権利がある金銭債権という意味では売掛金と同じですが、売掛金は売上債権に絞られ、代金の立て替えではないため意味が異なります。
立替金は、取引先との間でも発生することがあり、本来は取引先が負担すべき発送費を一時的に立て替えた場合などでも使用されます。
売掛金と前受金の違い
前受金は、サービス提供や商品の受け渡しなどを行う前に、手付金として受け取った金銭のことです。
サービス提供や商品の受け渡しを完了していない点が売掛金と異なります。
先に代金を受け取るため、回収できないといったトラブルを避けることができ、仕入れの際、支払いが楽になります。
売掛金と仮払金の違い
支払いは済んでいるものの、具体的な用途が確定していないうちに支払ったお金のことを指します。
たとえば出張費用で社員が一時的に支払った費用などです。
似た科目に「仮受金」があります。
これは金銭を受け取ったものの用途が未確定で、一時的に処理するためのものです。
売掛金は売上債権であり、内容が明確なので、取引に内容が分からない状態である仮払金、仮受金とは性質が異なります。
売掛金を回収する手法
売掛金は、きちんと回収できなければ売上にはなりません。
売上がなければ手持ちの資金が不足し、経営が立ち行かなくなってしまいます。
もし、取引先が期日までに代金を支払ってくれない場合、売掛金を回収するためにどのような方法があるか紹介します。
督促を行う
支払期日を間違えていた、振込みを忘れていたなど、取引先の手違いが原因という可能性もあります。
まずは電話やメールで督促を行いましょう。督促の証拠を残すためにも、メールがおすすめです。
できれば担当者同士だけではなく、自分の上司や取引先の経理担当など、複数人に向けて送信しましょう。
内容証明を送る
何度も連絡したにもかかわらず支払いがない場合は、内容証明を送ってみましょう。
内容証明は公的機関が内容を保証してくれる文書で、郵便局に5年間保管されます。
法的な効力はありませんが、心理的圧力をかけることができます。
訴訟を起こす
売掛金の回収には時効があります。
相手がいつまでも支払いを行わない場合には、訴訟を起こすことを検討しなくてはなりません。
ただし、法的措置をとるのは最終的な手段です。
相手が破産宣告をしてしまったら1円も回収できなくなる恐れもあります。
まずは根気よく督促を行い、交渉することが大切です。
売掛金を処理する流れ
売掛金処理は以下の流れで行います。
売上計上
売上計上は、商品やサービスの売上を帳簿に反映することです。
どのタイミングで売上計上するかは、企業ごとの経理状況によって異なります。税理士に相談するのもひとつの手段です。
入金確認
入金確認は、売掛金の支払期日などに取引先からの入金の有無を確認する作業をします。
入金日、振込名義、案件名、金額を確認して、請求内容との相違がないかチェックします。
相違がある場合には、納品書をチェックしたり、返品の有無を確認したりするなど、原因を調査した後に取引先に問い合わせを入れます。
また、支払期日を過ぎて入金がない場合には、営業担当者に督促をするように促します。
消込作業
入金確認で相違が無ければ、売掛金として計上した金額が入金されたことを帳簿に反映して、売掛金を消します。
この作業のことを「消込作業」といいます。
売掛金の残高確認
売掛金の残高確認は、1カ月など期限を決めて、定期的に行います。
売掛金の明細表である売掛金残高一覧表を使い、期日を過ぎても未入金のものがないか、金額の誤りがないか確認していきます。
確認作業は極めて手間がかかるため、取引先ごとに補助科目を決めて、その補助科目ごとにチェックすると効率よく作業を進められます。
売掛金の仕訳方法は?
売掛金の回収もれを防ぐポイントは、経理業務を正確に行うことです。
ここでは、売掛金が発生したときに必要な経理の仕訳について説明します。
売上時の仕訳
売掛金は債権であるため、賃借対照表では資産に分類されます。
売上発生時には資産が増加することになるので、借方に「売掛金」として記載します。
対となる貸方には「売上」として同じ金額を記載しましょう。
回収時の仕訳
代金を回収してはじめて「売掛金」がなくなります。
借方には増加した資産として入金方法と金額を、貸方には減少した売掛金を記載します。
例えば現金で入金があった場合には、借方は「現金」、貸方は「売掛金」となります。
消費税の仕訳
消費税の仕訳は、課税事業者か免税事業者かによって異なります。
仕訳方法には、「税込み経理方法」「税抜き経理方法」の2種類がありますが、課税事業者はどちらを使用しても問題ありません。
免税事業者の場合は、「税込み経理方法」で処理します。税込み経理方法は、売上と消費税額を合算して処理する方法です。
消費税込みの金額として記帳して構いません。税抜き経理方法では、本体価格と消費税額を分けて記帳します。
その際、借方勘定科目には「仮払消費税等」、貸方勘定科目には「仮受消費税等」を使用します。
売掛金の仕訳処理例
いくつかのケースに分けて代表的な仕訳の例を紹介します。
回収不能の場合
売掛金の回収が不可能で貸し倒れとなった場合は、貸倒損失として計上します。
ただし、貸倒損失と認められる範囲に条件があり、貸倒が起きたからといって、すべてが損金にできるわけではないため注意が必要です。
また貸倒損失は、売掛金の回収が不可能になったことが明らかになった事業年度で計上します。
一部入金された場合
一部入金された場合の仕訳は、売掛金回収時の仕訳と同じです。
後で金額だけ確認すると、いつの売掛金の一部が入金となったのかわかりにくい点には注意が必要です。
会計ソフトに仕訳を入力する際に、一部入金であること、いつの売掛金に対するものか記載しておくと、わかりやすいです。
また誤って全額を消し込みしないようにします。
値引きした場合
売掛金を値引きした場合には、入金があった際に売上値引きの勘定科目を立てます。
売掛金が発生した際の逆仕訳をする方法もあります。
返品された場合
商品代金の入金前に商品が返品された場合には、返金処理をするのではなく、売掛金から差し引く処理をすることが多いです。
売掛金を適切に管理するポイント
売掛金には未回収リスクがあり、長期間支払いが滞ることや倒産などによって支払いが不能になる可能性もあります。
そのため、売掛金は適切に管理することが大切です。
以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
売上債権回転率や売上債権回転期間を把握する
売掛金の回収状況は、売上債権回転率や売上債権回転期間といった指標が判断材料になります。
キャッシュフローの悪化によって黒字倒産に陥ることを避けるためには、売上債権回転率や売上債権回転期間を把握しておくことが大切です。
売上債権回転率は、売掛金や受取手形などの売上債権の回収度合いを見ることができます。
売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権(売掛金など)の式で求められます。
回転率が高いほど、回収の効率は良いです。
同業他社と比較して売上債権回転率が低い場合には、売掛金の回収ルール等を見直しましょう。
黒字倒産のリスクを軽減する
信用取引では売上が増加すると、売掛金も増加します。
支払い期日までに入金がない状態であっても、買掛金や税金などの支払いをしなければなりません。税金は売上が増えれば増加します。
そのため、売掛金の回収が遅れるとキャッシュフローが悪化して、買掛金や税金の支払いが滞り、
金融機関から借入を行うと、利息の支払いが発生することで、ますます経営状態が悪化していくリスクが高まります。
すると、帳簿上は黒字であるにもかかわらず、手元に現金がないことから、最悪の場合、いわゆる黒字倒産を招きかねません。
黒字倒産を防ぐには、信用取引のリスク軽減のための対策を講じることが必要です。
取引先に残高確認を行う
売掛金については、まれに従業員による不正が行われることがあります。
従業員による不正を防止・発見するためには、売掛金の残高が正しいかどうかを取引先に確認する方法が効果的です。
取引先ごとに管理されている金額が正しいかどうか、取引先に残高確認書を送付して回答をもらいます。
請求額と入金額に差異がある場合には、その差異の内容を確認し修正を行います。
健全な経営のために。売掛金について正確に理解しよう
事業を継続するためには、売掛金と買掛金のバランスや、入金と支払いのサイクルをきちんと把握することが重要です。
事業が成長し、取引先が増えるにしたがって、管理は大変になっていきます。
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