更新日:2022/11/30 17:13
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ワークエンゲージメントを高めるには?必要な3つの要素や測定方法など詳しく解説
読了まで約4分
仕事に対しポジティブである、もしくは充実しているなどメンタル面での健康状態を示す概念であるワークエンゲージメント。
仕事で収入だけを求めるのではなく、やりがいを持って働けるか、心身の健康を保てるかなどを重視する人の増加に合わせ、注目されるようになっています。
本記事では、ワークエンゲージメントの概要、ワークエンゲージメントを高めることで得られるメリット、高める方法などについて解説します。
離職率低下や従業員満足度向上施策を検討している経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
ワークエンゲージメントとは
近年、ビジネスの世界で注目を集めるワークエンゲージメントとはどのような意味を持ち、なぜ注目されているのかについて解説します。
ワークエンゲージメントの意味
ワークエンゲージメントとは、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の研究で知られているユトレヒト大学シャウフェリ教授らが2002年に提唱した概念です。
「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」を示すものと定義されていて、メンタル面の充実が仕事のパフォーマンス向上や離職率軽減に好影響を与えるとしています。
ワークエンゲージメントが注目される背景
ワークエンゲージメントが日本でも注目を集めるようになった主な理由として挙げられるのは、生産労働人口の減少です。
国立社会保障・人口問題研究所が2016年に発表した「日本の将来推計人口(平成29年(2017年)推計)」では、15~64歳の生産労働人口は、1995年の8,726万人をピークに2029年には7,000万人、2040年には6,000万人を割り込むと予測しています。
参照:国立社会保障・人口問題研究所|日本の将来推計人口(平成29年推計)
減少を続ける生産労働人口のなかで優秀な人材を確保するには、収入だけではない別の魅力が欠かせません。
さらに終身雇用の年功序列から成果主義へと変わっていくなか、以前よりも人材の流動性も高まっています。
そのなかで、人材の流出を抑え優秀な人材を確保するには、やりがいや心身の健康といったメンタル面での充実を示すワークエンゲージメントが注目されているのです。
この傾向は、2019年に厚生労働省が発表した、「令和元年版労働経済の分析」のなかでワークエンゲージメントの重要性が説かれたことにより、さらに大きな流れとなっています。
ワークエンゲージメントの3つの要素
ワークエンゲージメントを構成する3つの要素として、「活力」「熱意」「没頭」があげられます。それぞれの概要は次のとおりです。
1.活力(Vigor)
活力とは、仕事に対するエネルギーの高さを表します。
具体的には次のような状態です。
- 困難な状況であってもあきらめず積極的に取り組んでいる
- 仕事上でダメージを受けてもダメージを残さずに回復する
- ストレスが少なく仕事を楽しんで進めている
2.熱意(Dedication)
熱意とは、仕事にやりがいを感じ熱い思いを持って働く状態を示します。
たとえば、下記の内容が挙げられます。
- 新事業の創出や新製品の開発など常に新たな分野に挑戦しようと取り組んでいる
- 自身の仕事に意味を見出し、誇りを持って働いている
- 仕事に対する興味や探究心が強く、常に知識を得ようと努力する
3.没頭(Absorption)
没頭とは、仕事に集中しほかのことに気が向かないほどのめり込んでいる状態を示します。
たとえば、下記の内容です。
- 集中して働くことで幸福感を得られる
- 仕事をしているとつい夢中になり数時間が数分に感じられる
ワークエンゲージメントと関連する概念との違い
ワークエンゲージメントをより深く理解するには、関連する概念との違いについて理解しておくことが大切です。
- ワーカホリックとの違い
- バーンアウトとの違い
- リラックスとの違い
それぞれについて詳しく解説します。
ワーカホリックとの違い
ワーカホリックとは、仕事を意味する「Work」とアルコール中毒を意味する「Alcoholic」を合わせた造語で、中毒になるほど仕事に夢中になっている状態を示します。
ただし、その主な理由は仕事を失うことに対する不安や恐怖からの回避です。
その点が仕事にやりがいを感じ充実感を得られる状態のワークエンゲージメントとは大きく異なります。
また、ワーカホリックは自身の健康やプライベートなどすべてのことよりも仕事を優先する点においても、心身の健康を重視するワークエンゲージメントとは異なるといえるでしょう。
バーンアウトとの違い
バーンアウトとは、日本語で燃え尽き症候群と訳され、ワークエンゲージメント提唱者でもあるシャウフェリ教授のもう一つの研究テーマです。
ただ、内容についてはワークエンゲージメントの対極に位置する概念のため、意味合いはまったく異なります。
さまざまな事情から仕事や会社に対してネガティブな感情を持ち意欲を失ってしまう状態がバーンアウト。
仕事に対してポジティブに取り組む状態がワークエンゲージメントです。
リラックスとの違い
ビジネスにおけるリラックスとは、仕事に対しポジティブなイメージを持って取り組んでいる状態を表します。
この点については、ワークエンゲージメントと同じです。
異なるのは、リラックスが仕事自体へのポジティブさであるのに対し、ワークエンゲージメントは仕事に対する取組みや意識のポジティブさである点です。
ワークエンゲージメントは困難な状況や挫折した状態でもポジティブさを欠きませんが、リラックスな状態を保てるのは仕事が上手くいっているときのみです。
ワークエンゲージメントを高める取り組みが与える影響
企業が従業員に対し、ワークエンゲージメントを高める取り組みを行うことで得られる主なメリットについて解説します。
従業員の離職を防ぐ
ワークエンゲージメントを高められれば、仕事に対して積極的に取り組む従業員が増えるため、離職率の低減が可能です。
実際、2019年9月、厚生労働省が発表した、「令和元年版労働経済の分析」において、新入社員の入社3年後の定着率や従業員の離職率は働きがいに関与するとの結果が出ています。
従業員の働きがいが高い企業では、定着率も高く離職率は低下、逆に働きがいの低い企業では定着率も低く、離職率が高まる傾向がみられます。
従業員の生産性が向上する
仕事に積極的に取り組み、熱意を持って新たな分野の知識を吸収しようという意識が高まれば、自ずと業務の質が向上し、生産性向上にも大きく貢献します。
前述した「令和元年版労働経済の分析」による、生産性と働きがいについての調査では、働きがいがあると回答する従業員の多い企業は、実際に高い労働生産性を実現しています。
労働生産性の向上と働きがいは正の相関関係があることがわかっています。
従業員がストレスを感じにくくなる
ワークエンゲージメントが高まれば、従業員は心身の健康も保てるようになり、疲労や睡眠不足解消によりストレスが軽減するのも大きなメリットです。
従業員が仕事や企業に対しストレスを感じる要因の一つにメンタル面の不調があります。
仕事によって心身の健康を害する状態になれば、常に疲労、睡眠不足の状態に陥り、仕事や企業に対して強いストレスを持ってしまうでしょう。
メンタルの不調は蓄積されればされるほど、回復には多くの時間が必要です。
回復不能になれば貴重な人材を失うリスクがあるため、ワークエンゲージメントの向上は企業にとって欠かせない施策といえます。
顧客満足度につながる
従業員のワークエンゲージメントが高まれば、顧客満足度の向上も可能です。
ワークエンゲージメントの高い従業員は自社の価値を信じて仕事をしているため、顧客に対しても強い熱意を持って対応できます。
自社商品についても詳しく知っていることから、顧客からの質問、問い合わせにも迅速に対応でき、信頼感や安心感を与えられるでしょう。
また、ワークエンゲージメントの高い従業員になれば、新事業の創出や新商品の開発などで良いアイデアが生まれやすくなるのも大きなメリットです。
顧客に対してより良い商品やサービスの提供が可能になり、満足度向上に大きく寄与するでしょう。
ワークエンゲージメントの尺度や測定方法
ワークエンゲージメントは定量的な測定が可能です。
ここでは、主な3つの測定方法を解説します。
1.MBI-GS
MBI-GSとは、「Maslach Burnout Inventory-General Survey」の略称で、ワークエンゲージメントを測定するものではなく、反対の概念であるバーンアウトを測定するものです。
MBI-GSを測定し、得た結果が低ければワークエンゲージメントが高い、逆に結果が高ければ、ワークエンゲージメントが低いと判断できます。
測定する際は、「仕事での疲れや消耗(疲弊感)(5項目)」「仕事への熱意が減退し、冷めた感情を仕事に抱く(シニシズム)(5項目)」「仕事に対する自信低下(職務効力感)(6項目)」の3要素16項目から聞き取りを行い算出します。
2.OLBI
OLBIとは、「Oldenburg Burnout Inventory」の略称で、測定項目は「疲弊」と「離脱」の2つです。
MBI-GSと同じくバーンアウトを測定する方法で、測定結果も同様に低ければワークエンゲージメントは高いと判断します。
3.UWES
UWESとは、「Utrecht Work Engagement Scales」の略称で、前述した2つの方法とは異なり、ワークエンゲージメントそのものを測定する方法です。
ワークエンゲージメントを構成する3要素である「活力」「熱意」「没頭」を17項目に分け、聞き取りによって測定します。
ほかの方法に比べもっとも的確にワークエンゲージメントの測定ができるとして、広く活用されている方法です。
なおUWESには、日本版(9項目)、短縮版(5項目)で測定するものがあり、日本人の労働者に合わせた日本版が多く活用されています。
ワークエンゲージメントを高める方法
ワークエンゲージメントを高める方法は大きく分けて、仕事の資源を充実させること、個人の資源を充実させることの2点です。
しかし、最終的には両方を充実させる必要があります。
それぞれの意味や両方を充実させる必要性などについて詳しく解説します。
仕事の資源
仕事の資源は、仕事に関するさまざまな状況や環境を指します。
具体的には、「職場での裁量権」「上司・同僚からのサポート」「成長機会」などにより、仕事量を減らす、負担を軽減させる、モチベーションをアップさせることです。
たとえば、周囲からのサポートを受けながら仕事を進めつつ成長の機会を活かせば、自ずと裁量権を得られるようになり、さらに大きな仕事に挑めるようになるでしょう。
これを繰り返すことで仕事の資源を増やすことが可能です。
ワークエンゲージメントは、仕事の資源が増えるほど高まるため、やりがいやモチベーションはさらに高くなります。
個人の資源
個人の資源とは、個人の内的要因を指すものです。
具体的には、「自己効力感」「仕事に対する楽観性・ポジティブ思考」「仕事をする際の自尊心」などにより、心理的ストレスの軽減や高いモチベーションの維持につながることを指します。
たとえば、困難な仕事を与えられた際でも負担に感じず、ポジティブ思考で当たることで心理的なストレスを軽減し、本来の力を出せるよう行動することです。
困難を乗り越えることで自尊心につながり、さらに困難な仕事でも楽観性を持って臨めるようになるでしょう。
仕事の資源と個人の資源はどちらかが増えれば、もう一方も増えるといった相互作用が働くため、両方を意識して仕事を進めることが重要です。
ワークエンゲージメントを高めて働きやすい職場環境をつくろう
ワークエンゲージメントとは、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」を示すものです。
メンタル面を充実させることでストレスを軽減させ、生産性向上や離職防止の実現に貢献します。
ワークエンゲージメントを高めるには、個人がポジティブに物事を捉えて積極的に挑む姿勢が重要です。
実現するためには周囲の環境やサポートが欠かせません。
上司や同僚で互いに協力し合いコミュニケーションを重ねるなど、ストレスフリーな職場環境の構築が重要だといえるでしょう。
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