更新日:2024/05/31 12:00
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資金繰り
役員借入金とは?メリットやリスク、解消方法を解説
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中小企業のオーナー社長の場合、会社の運転資金を社長の私財から貸し付けることは珍しくありません。
これを「役員借入金」と呼びますが、役員借入金とはどういう借入金でどのように返済するのでしょうか。
本記事では、役員借入金について詳しく解説します。
役員借入金とは
役員借入金とは、社長や役員が個人資金の一部を会社の運転資金として貸すことです。
資金が十分ではない中小企業では、会社の創業時に社長が資金を出したり、役員借入金は珍しいことではありません。
社長は出資する代わりに株式を受け取りますが、創業時だけでなく、会社を運営する中で資金が不足した場合に、社長や役員が自分の私財を会社に貸し付けることもあります。
創業社長の場合、自分の会社にお金を出すので「返さなくてもいい」という気持ちであっても、会社としてはしっかり帳簿につけないと経理上問題があります。
なぜなら会社に存在しないお金がどこからか湧いてきたことになるので、それでは監査が通りません。そのため、社長が会社に貸し付けた役員借入金は、決算書では短期借入金として帳簿に記録されます。
役員借入金のメリット
では、役員借入金を活用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。3つのメリットをご紹介します。
・節税効果
金融機関からの借入であれば、利息を支払うと資金が外部に流出します。
しかし役員への利息の支払いは、身内への支払いとなるため支払利息は費用に計上され、会社の利益は圧迫されません。役員給与ではないため、定期同額給与に抵触するなどといった制約は受けないというメリットがあります。
また、借入金の返済としてのお金は税金や社会保険料も発生せず、節税効果が得られます。
・税優遇制度を受けられる
役員借入金で会社にお金を入れた場合、資本金の扱いにはなりません。
資本金が1億円を超えると、法人税の軽減税率や、少額資産の損金参入の特例の対象外となります。また、資本金が3000万円を超えてしまうと、中小企業の素材特別措置法の税額控除を受けられません。
一方で、役員借入金なら資本金は増えないので、各種の税優遇の適用が継続されます。
・利息や返済期限がない
役員借入金は、利息の設定が任意で、返済の期限も決まっていません。
通常借入金は返済期限が決まっており、期限までに返済しなければ会社の信用を大きく失ってしまいます。そのため、経済的余裕がなくても返済は必ず行わなければならず、経営が圧迫されてしまうこともあります。
しかし役員借入金なら、いずれ返済する必要はあるものの、資金繰りがうまくいっているタイミングで自由に返済ができます。
役員借入金は借入先の役員が同意すれば、利息ゼロでお金を借りることも可能です。無利息の融資を受けたということになるため、法律的にも問題ありません。
役員借入金のリスク
社長が自分の会社にお金を貸すことに、何も問題はなさそうに思えます。
第一、社長が貸してくれれば銀行などからお金を借りなくて済むので、会社としては助かります。
しかし、実はそう簡単にはいかないのです。役員借入金には2つのリスクがあります。
まず、会社の自己資本比率が悪化します。役員借入金を会社の運転資金にするということは、たとえ社長から借りたお金でも、会社からみると他人からお金を借りたことになります。
会社がお金を借りると自己資本比率が悪くなります。
そうなると銀行の評価が下がることになり、この先融資が受けにくくなります。
しかし、銀行でも役員借入金は負債とはとらえないので、それほど心配することはありません。
もっと問題なのは、社長の財産を相続する立場の人にとって、役員借入金が債権となることです。
債権は相続財産に含まれるので、相続人にとっては、返ってくるかどうかわからない債権を相続することになります。
もちろん、社長が元気なうちはこのような問題は起きませんが、いつ何があるかわかりません。
役員借入金が少ない金額であればあまり問題になりませんが、大きな金額になると相続時に面倒なことになるので、早めに返済するほうがいいでしょう。
このように、役員借入金には多少の懸念事項はあるものの、無利子で借りられるので会社は資金繰りが楽になります。
特に会社の創業期でまだ経営が安定しない時期には、役員借入金は非常に役立ちます。
役員借入金を解消する方法
社長が債権を放棄すれば、役員借入金は解消されます。
社長が債権を放棄すると会社は返済する必要がなくなるので、その分の金額が利益として計上されます。
当然ながら、利益には税金がかかるので、今度は役員借入金の返済のかわりに、税金が重くのしかかってくるかもしれません。
これを回避するには、前年度以前から持ち越しとなっている繰越欠損金があれば、債権放棄の利益分と相殺することができます。
赤字はすべて繰越欠損金にできるわけではなく、一定の基準があるため必ず使える方法ではありませんが、現時点で繰越欠損金があればこの手を使いましょう。
また、役員借入金を資本金に組み入れる方法もあります。
会社としては債権が消えて資本金が増えるのですから、いいことづくめです。
この方法には2つのパターンがあります。
現物出資型
この場合の現物とは債権のことで、社長が債権を会社に譲渡することにより、相殺するものです。会社は債権を譲渡してもらったお返しに新規株式を社長に渡します。
仮に社長が100%オーナー株主である場合には、単純に債権放棄(債務免除)を行うことで、負債を単純に消滅させ、借入金から繰越利益剰余金に振り替える方法が簡単です。
この債権放棄(債務免除)の場合も債務免除益が益金の額に算入されるため、繰越欠損金制度を利用するなどタイミングを見計らって行うことになります。
現金払込型
まず、社長が役員借入金と同じ金額を会社に出資し、会社は社長にその分の株式を渡します。
次に、会社は社長が出資したお金を社長に返します。出資金にも返済金にも税金はかからないので、現金払込型のほうがリスクがありません。
このほか、単純に債権を免除する方法もあります。社長が債権を放棄すれば債権は消滅します。
手続きとしては一番簡単ですが、会社としては返すべき債務がなくなるので、その分が利益として計上されます。
するとその分が課税対象になるので、税金が増えることになりますから注意が必要です。
役員借入金は税金にも影響を与えることがある
役員借入金とは、社長が会社に運転資金を貸し付けるものです。
社長は出資するかわりに株式を受け取りますが、創業時だけでなく会社を運営する中で、資金が不足すれば社長が貸し付けることはよくあります。
会社からみると無利子で貸してもらえるので経営上有利ですが、役員借入金をそのままにしておくと、税金が増えるなど不都合な面もあります。
メリット・デメリットを考え、役員借入金を活用するか、金融機関から融資を受けるかを決めましょう。
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執筆者情報
小山 昇 / 株式会社武蔵野 代表取締役社長
1948年、山梨県に生まれ、東京経済大学卒業。
1977年、株式会社ベリーを設立し社長に就任。
1989年、現職に就任。
1990年、株式会社ダスキンの顧問に就任。
1992年、顧問を退任し現在に至る。
全国の経営者でつくる「経営研究会」主催。
株式会社武蔵野は2000年日本経営品質賞、2010年国内初日本経営品質賞2度目の受賞。
現在パートナー会員750社以上の会員企業をアドバイス。
日本経営品質賞受賞の軌跡、中小企業のIT戦略、実践経営塾、実践幹部塾と、全国で年間1900回以上のセミナーを行っており、訪問社数も年間約120社を超える。
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