更新日:2022/10/28 17:31
経営
雇われ社長とは?オーナー社長との違いやメリット・デメリットなど詳しく解説
読了まで約4分
社長というと、独立開業した存在と考えている方も多いかもしれません。
しかし、自分で会社を設立しなくても、雇われ社長という立ち位置で経営に携わることが可能です。
ただし、雇われ社長は自身で会社を保有する、オーナー社長と違い、経営における権限に制限があったり、立場が弱くなったりする点に注意しなくてはなりません。
本記事では、雇われ社長とオーナー社長の違い、メリット・デメリット、雇われ社長に就任する際の注意点などを解説します。
目次
雇われ社長とは
まずは、雇われ社長の基礎知識について解説します。
雇われ社長の意味
雇われ社長とは、自身で会社を保有せず、会社のオーナーに雇われている社長のことです。
代表取締役等の肩書を持ち、経営を取り仕切る立場ではありますが、雇われているという点では社員と同様であり、給料を受け取って働くことが一般的です。
特に大企業では、経営力強化などを目的として、外部から雇われ社長を引き入れることが多いです。
中小企業においても、一族経営を行ってきた企業が後継者不足のために雇われ社長を引き入れるケースなどがあります。
オーナー社長との違い
オーナーとは、大半の株式を保有し、会社の所有権を持っている人物のことです。
オーナーが必ずしも実務についている必要はないのですが、オーナー自身が会社の経営も担っている場合、オーナー社長となります。
つまり、オーナー社長は経営権だけでなく、株主総会における議決権も所有しており、会社内で最も強い権限を持っている存在です。
そのため、自身の進退についても基本的に自分で決定できます。
一方、雇われ社長は前述の通り、普通の従業員と同じ立場です。
会社に投資して株式を保有してるわけではないため、オーナー社長のような議決権も持っていません。
自分の進退は雇い主であるオーナーが決定するため、ある日突然解任される可能性があります。
雇われ社長のメリット
雇われ社長として働くことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、雇われ社長の立場で得られる4つのメリットを紹介します。
業績に応じて年収が上がる
雇われ社長は、他の従業員と同じように人事評価を受けて報酬が決定するため、業績をあげれば年収アップが期待できます。
多くの企業では、人事評価制度と給与制度が紐づけられており、成果によって基本給与や賞与が決定します。
雇われ社長も同様に、オーナーや株主に成果が評価されれば、報酬が上がる可能性があるのです。
労務行政研究所の調査によれば、社長の平均年収は4676万円、企業規模300人未満の中小企業でも3295万円という結果となっています。
(※)一般社員よりも高額の報酬が期待できるでしょう。
経費を使える幅が広がる
一般社員よりも、申請できる経費の幅が広がる点もメリットです。
一般社員は業務で使う備品や出張費用などが経費のメインになりますが、社長という立場になれば住宅費の一部や全部を社宅という名目で計上できるケースがあります。
さらに、接待費として認められる幅も広がるため、役員同士で昼食会を開いたり、接待で高級店に足を運んだりしやすくなるでしょう。
とはいえ、完全な私費を経費計上することはできません。不正会計になってしまわないよう、会社の経費ルールを正確に把握してください。
資金準備の必要が低い
会社設立にかかる費用を自己負担せず、経営者の立場を手に入れられる点も魅力です。
出資金はオーナーが負担するため、多額の資金を自分で準備する必要がありません。
つまり、会社の経営悪化や倒産に対するリスクが比較的少ない状況で、会社経営の経験を積むことができます。
経営者としての経験を積める
雇われ社長として経営に関わることで、貴重な経験やノウハウを得られます。
実務上、雇われ社長は経営のトップに立つ存在です。
外部企業の経営者とコミュニケーションをとったり、経営者同士の集まりに参加したりなど、一般社員にはできない経験を得られる機会が増えます。
また、経営や事業の課題解決に向き合っているうちに、改善力や決断力などの経営スキルを身に付けられます。
社長として組織をハンドリングする経験を積むことで自分自身の成長につながるでしょう。
雇われ社長のデメリット
雇われ社長は会社の所有権や決定権を持っていないという立場上、リスクがあることも知っておくことが大切です。
雇われ社長のデメリットや注意点を紹介します。
最終的な意思決定の権限がない
前述の通り、会社の株式を保有していない雇われ社長は、経営方針などに関する最終的な議決権を持っていません。
経営のトップに立つ存在ではあるものの、最終的な意思決定は雇い主であるオーナーや会長が行っている場合が多いのです。
また、一族経営を行っているなど会社の経営体制によっては、社長より他の重役のほうが発言力を持っている場合もあります。
そのため、社長という肩書を持っていながらも、オーナーが決めた方針に従って実務を実行するだけの存在になってしまうケースも珍しくありません。
期待したように経験が積めず、モチベーションを失ってしまうこともあるでしょう。
業績が悪化すると解任のリスクがある
議決権を持っていないため、自身の進退を自分で決定する権限がなく、株主総会で解任されてしまうリスクがあります。
相当な業績悪化や大きな失敗がなければ任期途中に突然解任されることはありませんが、解任の可能性がある点には留意すべきです。
また、任期切れの際に再任されるかどうかはオーナーの評価に左右されます。
しっかり業績を残していれば再任されますが、低ければ解任の可能性が高くなるでしょう。
雇用保険や労災保険に加入できない
雇われ社長は経営者であるため、給料をもらっていながらも従業員のように雇用保険や労災保険に加入できません。
そのため、万が一解任されて失業したとしても、失業保険を受け取れないのです。
また、管理職は労働基準法が適用されないため、残業代や休日出勤手当も支給されなくなります。
代わりとして役員報酬を得られるようになりますが、長時間労働しても報酬に反映されなくなるのです。
連帯保証人になることがある
社長という立場上、会社が融資を受ける際に、連帯保証人になるよう求められるケースがあります。
連帯保証人になると、会社の経営が傾いて返済ができなくなった場合、社長が返済を肩代わりしなくてはなりません。
他にも、従業員への給与や原材料の仕入れ先に対して未払い金があると、これも社長個人が返済を求められる可能性があります。
雇われている立場でありながら、大きなリスクを背負う可能性があることはデメリットの一つといえるでしょう。
取引先のトラブルなどの責任を負う必要がある
取引先とのトラブルや経営に影響するような事件が起こった場合、社長が矢面に立たなければなりません。
例えば、会社が不祥事を起こしたり、社員や顧客から訴訟を起こされたりすれば、社長が中心となって対応し、最終的な責任も社長が負います。
雇われている立場でありながら、オーナーと同等の責任を負わなければならないため「割に合わない」と感じるケースもあるでしょう。
雇われ社長のリスクやトラブルを回避するには
前段で述べた雇われ社長のリスクを回避するにはどうしたら良いのでしょうか。
具体的な回避方法を解説します。
多くの株を保有する
雇われ社長であっても、株を保有すれば株主総会での議決権を得られます。
株主総会での議決権は株式の保有数に応じて決まるため、多くの株を持っているほど自身の発言力を高められるのです。
オーナーからできるだけ多くの株を購入して保有すれば、自身の立場を安定させられるでしょう。
雇われ社長の話が来たら、誰がどれだけ株式を持っているのかリサーチし、自社株をどれくらい保有させてもらえるか確認しましょう。
連帯保証人は断る
オーナーから連帯保証人になることを迫られたとしても、連帯保証契約には細心の注意が必要です。
社長が連帯保証人になった状態で会社が倒産すると、会社が受けた融資の返済を社長個人が肩代わりすることになります。
金融機関から融資を受ける際、要件によっては必ずしも経営者が連帯保証人にならなくてはいけないわけではありません。
融資の内容や条件をよく確認し、安易に連帯保証人を引き受けないようにしましょう。
資金の流れを確認する
社長を引き受ける前に、その企業の資金状況を確認することも重要です。
例えば、オーナーが過去に金銭トラブルを起こして信用情報に傷が入っており、新たな融資を引き出すために雇われ社長を矢面に立たせようとしている可能性もあります。
結果的に経営の実権はオーナーが握って、責任だけを取らされるかもしれません。
トラブルを避けるためにも、企業の資金状況やオーナーの経歴などをリサーチし、不明な点があれば追及することが大切です。
意思決定の権限があるかを確認する
いわゆる、お飾りの社長にされてしまわないよう、意思決定の場に参加できるのかどうか事前に確認しましょう。
議決権を持っていないからといって、オーナーの言いなりで実務をこなすだけでは、社長としてのやりがいを感じられません。
ましてや、オーナーが現役で事業活動の実験を握っている企業だと、社長の権限はさらに弱くなってしまいます。
経営の意思決定はどのように行われているのか、オーナーは他の従業員の意見にも耳を傾けているかなど、社内状況をリサーチしておくことが大切です。
雇われ社長を辞めたい場合は?
雇われ社長を引き受けたものの、想像していたように経営者としての経験を積めず、辞任したいと考える人もいるでしょう。
民法651条第1項では、会社と役員の委任契約について「委任は、各当事者がいつでも自由に解除することができる」と定められており、いつでも辞任できるといえます。
しかし、会社法346条では「新たに選任された役員が就任するまで、役員としての権利義務を生ずる」とされており、結局は後任を探すまで雇われ社長を続けざるを得ないのです。
引継ぎも行わず突然辞任してしまうと損害賠償を求められる可能性もあるため、まずは後任を探す必要があります。
意思表示をする際には、代表取締役か取締役会にて辞任の意思を伝えれば、効力が発生します。
ただし、定款または株主総会の決議により取締役が選任されている場合は、総会の承認が必要です。
会社の機関設計にもよるため、登記事項証明書や定款を確認しましょう。
雇われ社長として成功するにはリスク回避が重要
雇われ社長は従業員と同じように労働契約を結んで、給与をもらいながら経営のトップに立つ存在です。
自己資金を投入せずに経営者としての経験を積み、自身のビジネススキルを大きく成長させることができます。
一方で、実務の実権をオーナーに握られてしまい、責任だけ負わされるリスクもはらんでいます。
雇われ社長の地位を打診されたら、その企業の経営状況や資金繰りを徹底的に調査し、不明な点はしっかり確認をとりましょう。
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